11 août 2016
出渕 裕氏×氷川竜介氏によるトークも開催!貴重な「機動戦士ガンダム」16mmフィルム上映レポート
フィルムだからこそ読み解ける富野由悠季監督のこだわりとは?
▲氷川竜介氏、出渕 裕氏
7月末から、テアトル新宿、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ新宿にて開催されている「サンライズフェスティバル2016満天」。8月5日(金)、テアトル新宿にて開催されたのは、TV版『機動戦士ガンダム』の第1話「ガンダム大地に立つ!」と、第12話「ジオンの脅威」を、現存する16mmフィルムで上映するという貴重な企画。ゲストとして、当時のアニメ制作事情に詳しい出渕 裕氏(メカニックデザイナー / イラストレーター)、氷川竜介氏(アニメ特撮研究家 / 明治大学大学院客員教授)が登壇し、上映後に作品にまつわる約1時間のトークが行われた。
16mmフィルムならではの魅力や特徴、さらに『機動戦士ガンダム』放送当時のアニメ制作現場の様子など、現場を知る2人だからこそ語れる濃密な内容となり、会場を埋めた来場者も興味深く聞き入っていた。
▲上映に使われた16mmフィルム[左]、映写機[右]
『機動戦士ガンダム』の16mmフィルムは、現像所に残っていたものを使用。また、映写機は別の映像制作会社からサンライズが譲り受けたもので、今回は映画館に映写機ごと持ち込んでの上映となった。上映前には、機材セッティングの時間を使い、氷川氏による各話の見どころ解説も。『機動戦士ガンダム』制作当時、16mmフィルムは制作陣によるチェック用として使われていたとのことで、同じ体験ができる貴重な機会であることが説明された。
また、第1話では、アムロ・レイが「これがジオンのザクか?」とつぶやくところで画角と色が変わると氷川氏が指摘。今回上映された映像でも、該当部分で明らかに画角と色が変わるのが確認できた。その理由について氷川氏は、何らかの経緯で該当のコマが欠損し、手前のコマも含めて再撮(オプチカル・プリンターによる複写)を行ったためと推測。そこまでして、富野由悠季監督はフィルムの呼吸、リズムを大切にしたかったのでは、と語った。
物語としてもひとつの区切りとなっていることから選ばれた第12話は、劇場版とのカットの違いや、コムサイを操縦しているパイロットのバイザーが半開きになっていることなど、細かな差異や特徴についてガイドが行われた。TV版の第12話を実際に鑑賞すると、フィルムの質感も含めて劇場版とはまた趣きが異なるテイストが感じられる。
第1話、第12話の上映終了後、出渕氏と氷川氏が登壇。氷川氏を進行役として、『機動戦士ガンダム』にまつわるトークショーがスタート。出渕氏は職業柄、着彩のミスや演出に目が行くという話から、『機動戦士ガンダム』という作品の衝撃について話が進められた。特に出渕氏は、ザクがサイド7に侵入する冒頭のシーンで、サイズ感を敢えてパワードスーツ程度に見せていることを指摘。サイド7に潜入したあとに巨大兵器であることがわかる、“サイズ感でつかむ”演出になっていると語った。
また、出渕氏、氷川氏とも、第1話の無駄のなさを改めて認識。なかでも、ガンダムがザクを1機ではなく2機倒すところ、さらに、ラストカットでジオン側から撃たれたミサイルがサイド7に着弾せずに終わるところも含め、富野由悠季監督自ら「完璧」と言うのも頷けるクオリティであることを解説。また、世界観にすぐに引き込まれるのは、戦争をその発端ではなく途中から描いていることが大きいとも出渕氏は力説する。第12話に関しては、ミノフスキー粒子の巧みな使い方や、ガルマがデギンに送ったビデオレターのメッセージ終了後にレシートのようなものが出てくる構造も含めて、斬新であったことなどについてトークが交わされた。
その後、「出渕氏にとってガンダムとは?」というテーマに移行。当時、出渕氏は『闘将ダイモス』への参加から引き続き『未来ロボ ダルタニアス』にもデザイナーとして関わっていた時期で、サンライズの別スタジオで『機動戦士ガンダム』を制作していることを噂で聞いていたと語る。後に『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』などでも活躍する出渕氏は、そんな『機動戦士ガンダム』を“革命的”と表現。以降のSFアニメ・ロボットアニメの風景がガラッと変わり、ここまでやっていいんだというひとつの指標になったと答えた。トーク終盤には、フィルム時代の想い出話を語りつつ、16mmフィルムの持つ独特の雰囲気について語られた。最後には、出渕氏が現在関わっている某アニメ作品に言及するサービスもあり、来場者も大きな拍手でそれに応えていた。
映写機を映画館に持ち込んで上映するという、珍しい形式で行われた今回の16mmフィルム上映。『機動戦士ガンダム』の歴史と、その価値が十分に伝わるものとなった。また、出渕氏、氷川氏によるトークショーも、両氏が長年の友人であることもあり、ユーモアを交えながら非常にリラックスしたムードで行われた。貴重なエピソードも続出し、ガンダムファンにとっては至福の時間になったと言えるだろう。
「サンライズフェスティバル2016満天」は、回替わりで様々なサンライズ作品を上映し、9月10日(土)まで新宿の映画館で開催。ガンダム作品からは、8月20日(土)に『鉄血のオルフェンズ』(チケット販売終了)が、8月25日(木)に『Gガンダム』が、9月2日(金)には『ガンダムΖΖ』が、それぞれ上映される。詳しくは こちらの記事をご覧ください。
(ガンダムインフォ編集部)
サンライズフェスティバル2016満天
[日程]第1部: 2016年7月30日(土) ~ 8月12日(金)、第2部: 2016年8月20日(土) ~ 9月10日(土)
[会場]テアトル新宿 / 新宿ピカデリー / TOHOシネマズ新宿
[料金]通常上映・レイトショー: 各回1,600円 / オールナイト: 各回4,300円
[日程]第1部: 2016年7月30日(土) ~ 8月12日(金)、第2部: 2016年8月20日(土) ~ 9月10日(土)
[会場]テアトル新宿 / 新宿ピカデリー / TOHOシネマズ新宿
[料金]通常上映・レイトショー: 各回1,600円 / オールナイト: 各回4,300円
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